Yurikago
Yasuo Sugibayashi
words&music: Yasuo Sugibayashi
arranged, recorded, mixed and performed by Yasuo Sugibayashi
mastered by Sakana Hosomi
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text: Tomoko Uda
illustration: Takafumi Sotoma

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ゆりかご
作詞/作曲/編曲:杉林恭雄

歌で編んだかご
星をくるんで
ゆれるゆりかご

すぐにあたたかな
女の両手が
君を抱くだろう

風も鳥も抱くだろう


ひとつゆられて
ふたつゆられて
君は泣くだろう

風も鳥も泣くだろう


歌で編んだかご
今は年老いた
男を抱くだろう

風も鳥も抱くだろう

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ゆりかご  story◎宇田智子 Tomoko Uda

 金魚鉢を飲みこんだ。最初は気がつかないほど小さかったのにお腹の中でだんだんふくれていき、10か月たったいまは落っことしそうにまるくて重い。鉢には海の水と、金魚ではなくて人が入っている。割れないようにこぼさないように、腰をひいてそろそろと歩く。鉢が内側からボコボコと叩かれる。中身はやっぱり金魚かもしれない。

 鉢が割れて水があふれて、出てきたのは人だった。さっきまではおとなしく水に浮かんでいたのに、飲みものを飲ませ、抱きあげ、歌ってあげ、一緒に踊り、寝たと思ったらまた起きて、気の休まるときがない。疲れはてて砂浜に放りだしてやったら、すっと眠った。波の音を聞いて安心したのか。うすい髪の毛が風にそよいでいる。

 髪がのびると自分でごはんを食べるようになり、歌って踊って本を読み、ひらりと家を出ていった。ときどき届く手紙が、元気だと知らせてくれる。ごはんも歌もひとりでつくれるようだ。急に手持ちぶさたになって、庭に出る。かすかに雨が降っている。木の葉からこぼれるしずくをじっと見上げる。

 ある日の夕方、急に帰ってきた。横になっている私の手をとり、海に行こうという。ボートを出して、二人で寝ころんだ。歌を歌ってくれ、物語を話してくれる。私が教えた歌も、知らない物語も。嬉しい、金魚だなんて疑って悪かったねというと、見えなかったんだから仕方ないよ、それでも大事にしてくれたじゃないと笑う。ほっとして、そのまま気を失った。